道南地方で35年ぶりに誕生した新たな酒蔵「箱館醸蔵」(七飯町大中山1)が5月24日、日本酒の新銘柄「郷宝(ごっほう)」の一般販売を始めた。
北海道産の酒造好適米「吟風」と「彗星」を使った5種類の「郷宝」
「郷の宝で醸す」の意味を込めた銘柄が表す通り、道南で収穫した酒造好適米「吟風(ぎんぷう)」「彗星(すいせい)」の2品種を自社精米し、水質の良さで知られる横津岳の伏流水で酒を仕込んだ。「おいしいお酒を造るのはもちろん、郷土の米と水、人と風土で醸す北海道の地酒を造りたかった」と取締役の冨原剛さん。国稀酒造(北海道増毛町)で杜氏(とうじ)を務めた東谷浩樹さんがその理念に共感し、2020年8月の酒蔵立ち上げ時から杜氏として指揮を執る。
「郷宝」が目指す味わいは、すっきりとした味わいながらコクと奥行きが感じられる「淡麗旨口(うまくち)」。日本酒は一般的に「淡麗辛口」か「芳醇(ほうじゅん)旨口」に分類されることが多いが、「道南のさまざまな食材や料理に合う、懐の深い酒になってほしい」との思いを込めて、造り手の高い技術が必要だとされる、相反する性質を併せ持つ酒質の実現に挑んだ。冨原さんは「初めての気候風土と設備の中で、よくこの味に仕上げてくれたと杜氏に感謝している。和洋の文化が入り交じった道南の土地柄も表現できたのでは」と話す。
今回出荷するのは1万本。「彗星」を使った純米酒、特別純米酒、純米吟醸酒と、「吟風」を使った純米酒、特別純米酒の5種で、いずれも四合瓶(720ミリリットル)入りの生酒。価格は純米酒=1,540円、特別純米酒=1,980円、純米吟醸酒=2,200円。酒蔵併設の直売所(10時~17時)のほか、地酒を扱う道南の酒販店と札幌・帯広などの一部酒販店で取り扱う。