2015(平成27)年8月に運行を終了した上野~札幌間の寝台特急「北斗星」の客車を活用した宿泊施設「北斗星スクエア」(北斗市茂辺地)が、4月22日に開業した。
この客車は、北斗市の市民有志による団体「北斗の星に願いをプロジェクト推進委員会」がクラウドファンディングで資金を集め、2016年にJR北海道から譲り受けた24系客車2両。市有地の学校跡地にレールを敷いて車両を設置し、広場や駐車場などを整備して一般公開してきた。年間1万人を超える見学者があり、敷地内で物販やカフェ営業を行って維持費に充ててきたという。
だが、コロナ禍により2020年4月以降はすべて休業せざるを得ず、維持費を得ることができない状況に。北斗星の運営や維持管理を行う「合同会社 青(青は旧字体)」は、「このままでは車両の維持が難しくなる」と判断し、車両を活用した宿泊施設の開業を決めた。国の補助金を一部活用して約3000万円を投じ、塗装の修繕や給排水・電気設備の工事、空気清浄機能を備えた冷暖房システムの取り付けなどを行い、快適に宿泊できるように車両を整備。北斗星を外から眺めて宿泊したい人のため、トレーラーハウスも2棟購入して北斗星の前に設置した。
宿泊の申し込みは楽天トラベルで受け付ける。1人あたりの宿泊料は、北斗星B寝台(2段式寝台1室)宿泊プランが1名利用時5,500円、2名利用時4,000円。トレーラーハウス宿泊プランは1名利用時6,500円、2名利用時4,750円、3名利用時3,850円(いずれもオープン特別価格)。B寝台宿泊プランは共用のシャワー室が使用できるが、トイレは屋外トイレを使用する。トレーラーハウスはバス・トイレ付き。両プランとも食事の提供は行わず、近くにコンビニなどもないため、食料品の持ち込みを推奨している。夏季はバーベキューセット貸し出しプランを設定する予定だという。営業期間は11月中旬までとし、冬季は休業する。
開業前から鉄道ファンからの反響が大きく、既に大型連休期間はほぼ予約で埋まっているとのこと。同社代表社員の澤田導俊さんは「現状は道内からの申し込みが多いが、以前は東北・北海道新幹線に乗り、道南いさりび鉄道に乗り継いでくる鉄道ファンが全国から訪れていたので、今後に期待したい」と話す。
開業に先立ち、鉄道ファンを対象としたモニターツアーも実施。「北斗星への宿泊はもちろん、すぐそばを流れる護岸のない川辺を歩いたり、星の多い夜空を眺めたりと、都会ではできない体験が喜ばれている。さまざまな細かいアドバイスもいただいたので、できるところから反映していきたい」と澤田さん。「当社の役員は全員無報酬で、宿泊事業で得た収益はすべて北斗星の保全と維持費に充てる。たくさんの人に宿泊してもらえたら、それだけ長く保存できる。自分たちが楽しんでやっていることではあるが、皆さんにも楽しんでもらえたら」とも。