提供:Rethink Creator PROJECT 制作:函館経済新聞編集部
「地元を誰かにまかせない」をキーワードに、身近にある地域の魅力を自分たちで発見し発信するためのノウハウを学ぶ事ができる「Rethink Creator PROJECT」の函館セミナーが9月1日、金森ホールで開催され、30人がセミナーに参加しました。
「Rethink Creator PROJECT」では各地域にまつわる題材を使い、「デザインと情報編集の考え方」を講義やワークショップから学ぶことができます。
「Rethink=視点を変えて考える」と「Create=考えを形にして伝えること」をキーワードに、「学びの場」として、地元の魅力を伝える方法を学ぶセミナーを展開しています。セミナーは座学と、参加者が学んだ事を実践しながら作品を作るグループワークの二部構成となっています。また、「挑戦の場」として、全国で開催されているコンテストも実施しています。
このプロジェクトを主催する株式会社クリエイターズマッチ(東京都渋谷区)は、「クリエイターが働きやすい世界を創造する」というビジョンを掲げています。日本全国どこにいてもデザインを学ぶ事ができる環境を作るため、教育事業の一環として同セミナーやコンテストを展開しています。同社のノウハウをもとに、より多くの方々にデザインを学ぶ機会を提供するために、JT(東京都港区)が推進する地域社会への貢献活動の「Rethink PROJECT」と共に2018年から全国各地で開催されています。
函館セミナーは、デザインを用いて地元の人たちと地域振興などを手掛ける北海道厚真町在住のローカルデザイン・プロデューサー・田中克幸さんと、デジタルハリウッド札幌WEBディレクター/デザイナーでスクール運営やトレーナーなど幅広く活躍する寺越真知子さんの二人の講師を迎えました。
セミナーのメインテーマ「Rethink」とは、身近なことが視点を変えることにより、新たな価値や気づきを生み出すという考え方です。「地域に眠っている、ごく当たり前だと思われていた意外なお宝や価値があるもの」を再発見し、課題として函館の魅力を伝えるポスターを実際に作ることがゴールとなります。
「Rethink」の方法は「FILTER=属性を見る」「INSIGHT=内側を見る」「CAPTA=印象を見る」という3つの異なる視点から考えます。
最初に「属性を見る」方法について、田中さんが「函館の魅力」を例に挙げ解説しました。一般的な函館のイメージや魅力を伝えると「夜景」など誰もが知る情報になりがちですが、具体的に伝えたい「誰か」をイメージすることで、より具体的に今まで気づかなかった魅力の発見に繋がるという考え方です。
寺越さんが具体例として「甘党の後輩」「ご当地グルメを食べ歩く友人」など属性を挙げることで、よりディテールに富んだ函館のオススメ「イカようかん」「ラッキーピエロの元祖THEフトッチョバーガー」などが見えてくる事がわかりました。
2つ目の「内側をみる」では、属性で浮かび上がった「伝えたい相手」に寄り添うことで「なぜこの人に伝えたいのか」「どのようなことを伝えたら喜ぶのか」など内側からの視点を深堀りすることで、より方向性を明確化します。
そして3つ目の「印象を見る」では、自由でやわらかい「カプタ情報」について学びました。数値、位置情報、時間など「データ情報」に対して「カプタ情報」とは人の感覚や印象、雰囲気に基づいたもので、人の記憶にも残りやすい情報としてより強いメッセージを伝えることが可能になります。
セミナーの後半は、参加者が6つのグループに分かれ函館の魅力を発信するポスターを作成するワークショップが行われました。セミナーの前半で学んだ「Rethinkの3つの視点」を使って、事前に選んだ函館にちなんだ写真をもとにキャッチコピーを考えポスターに落とし込む実践的なワークショップです。
用意された写真は「五稜郭タワー」「函館ロープウェイ」「金森レンガ倉庫」といずれも函館の代表的な3つのランドマークで、ワークショップシートを使い「撮影者の気持ちになって、伝えたい相手を想像してみよう!」「写真から感じられるカプタをたくさん見つけてみよう!」「インサイトに寄り添って、印象的なコピーを作ってみよう!」という3ステップで函館の魅力を伝えるキャッチコピー作りが進められました。
最初のステップとして、個人ワークで各々が考える「伝えたい相手」と写真を絞り込むプロセス、続いてその写真から感じられるカプタ情報を見つける作業を行い、その後キャッチコピーの種を生み出しました。その後インサイトに寄り添った、より相手に伝えたい「理由」「メッセージ」を盛り込んで肉付けし、チームごとに1つのキャッチコピーを完成させました。
メンバーは10代から60代の男女と幅広い年齢層で構成されており、デザイン経験はないものの、実際に観光業に関わっている人なども数多く参加したため、非常にバラエティに富んだ内容となりました。
その結果、伝えたいターゲットは「都内に住んでいる歴女以外の女性で20代(五稜郭タワー)」「都会の子連れのお母さん(函館ロープウェイ)」、「実際にチームに参加していた40代の整体師の男性(金森レンガ倉庫)」とより具体的なものとなり、写真ごとに街の臨場感を伝えるローカルならではの3つキャッチコピーが選定されました。
最終ステップでは、選ばれたキャッチコピーを元に講師の寺越さんが、その場で写真画像とキャッチコピーを合わせながら3種類の函館の魅力を伝えるポスターを作成しました。このデザインパートも白熱し、フォントの種類や色の指定など、各チームから細かいリクエストがたくさん出された結果、3つのポスターが完成し、今回のセミナーは幕を閉じました。
ローカルデザイン/プロデューサー・田中克幸さん
「Rethink Creator PROJECT」セミナーを終了し、田中さんは「『その場所に直接行っている(地元の)人なんだな』ということが凄く伝わるキャッチコピーで、例えば東京の広告代理店のプロの方からは出ないようなキーワードが多かったです」と完成した作品について語り、「比較的レベルの高い題材を用意したのに、皆さんがすぐに応えてくれたので、函館のデザインや発想、アイディア出しのレベルは高かかった!」と驚いた様子でした。
デジタルハリウッド札幌WEBディレクター/デザイナー・寺越真知子さん
また参加者の細かいリクエストに応えながら、最終的に3種類のポスターを短時間で仕上げた寺越さんは「ライブデザインはその場で考えながらやるので緊張感はありましたが、皆さんが細かい指示やリクエストがあることでやりやすさも感じられました。楽しかったです」とセミナーを振り返りました。
JT北海道支社・小澤裕さん
JT北海道支社総合営業第5チーム課長の小澤裕さんは「道南では初めての『Rethink Creator PROJECT』でしたが、セミナーの視点を変えて伝えるという手法は自分も大変勉強になりました」と話し、今回セミナーで使用した題材については「『後々ポスターで使って貰えるような題材が良いな』と考え、函館の有名な3つのランドマークを敢えて選びました。ベタな題材なのでアイディア出しの難しさもあったかと思いますが、市民の参加者の皆さんの作品で『上手なキャッチコピーだな』と感じる作品も多かったので、実際に観光ポスターで使って貰えれば理想なのですが…」と期待を寄せていました。
クリエイターズマッチ・大友湧矢さん
イベント主催のクリエイターズマッチ教育部の大友湧矢さんは「北海道は札幌で数回開催し、今回函館は初開催でしたが、地元の人たちの愛がとても強い回でした。キャッチコピーにもこだわりがあり、いつもよりも『こうしてください』というオーダーにも繋がっていて、その点でも地元愛を感じました」と大盛況だったイベントを総括していました。
セミナーでの学びを活かし、挑戦の場として、誰でも作品を作って応募できるコンテストが行われます。応募テーマや応募期間などは追って発表されますが、9月から10月中を予定しています。詳細は決まり次第、Rethink Creator PROJECTの公式サイトや Instagram、Facebookなどの公式SNSで案内される予定となっています。