鹿部町の水産加工会社、一印高田水産(鹿部町本別)がこのほど、その日に水揚げされたホタテだけを原料とした新商品「噴火湾口産お刺身ホタテ貝柱」を期間・数量限定で発売した。
噴火湾近海で2年間養殖したホタテを社長の高田大成さんが自ら買い付け、漁港から数分しか離れていない工場で素早く加工して貝柱を外し、その日のうちにマイナス40度で急速冷凍させた。冷蔵庫でゆっくり解凍させれば、そのまま刺し身として食べられる。「ふっくらと柔らかい肉質が生み出すとろりとした舌触りとプリプリした食感、甘みが感じられる豊潤な味わい」が特徴だという。
買い付けるのは、その日のうちに工場で加工できる分だけ。大量に買い付けて殻付きのまま冷凍しておき、水揚げのない日や漁期が終わった後に解凍して処理することも技術的には可能だが、高田さんは「それでは味が落ちてしまうから」と一度きりの冷凍(ワンフローズン)にこだわる。
商品開発のきっかけは、新型コロナウイルスの影響による中国向けホタテの輸出減少。道産のホタテは中国で人気があり、鹿部町の漁港で水揚げされたホタテもその多くが殻付きのまま、またはボイルして冷凍で輸出されてきた。ところが今年は漁獲のピークを迎える2月ごろから中国の需要が激減し、同町産のホタテも輸出量が大幅に落ち込んだ。
「鹿部のホタテのあまりのおいしさに、ここに嫁ぐことを決心した」と話す同社専務の高田未花さんは、これを機にこの味を全国の消費者にも手軽に味わってもらおうと、業界で「玉冷」と呼ばれる貝柱の生冷凍製品の製造販売を夫の大成さんに提案。専門家にも学術的な見地からの意見を求め、暖流と寒流が混ざり合う噴火湾は栄養価が高くてホタテの生育に最適であることや、噴火湾産のホタテは他産地のものに比べて繊維質が少ない代わりに糖の一種であるグリコーゲンの含有量が多く、ほのかな甘みと濃厚なうま味をダイレクトに味わえる生食に適していることなどを調べ上げた。
3月22日に「道の駅しかべ間歇泉公園」で行った試食販売では、さっそくまとめ買いする人もいたという。同施設の売店で335グラム入り1袋1,944円で販売するほか、工場敷地内の同社直売所でも扱う。同町のふるさと納税返礼品にも採用され、1万円以上の寄付で3袋(約1キロ)届く。ホタテの水揚げが終了する4月中旬ごろまでしか製造しないため、販売・ふるさと納税返礼品ともに在庫が無くなり次第終了する。