重要文化財の旧函館区公会堂(函館市元町)に掛けられていた工事用のシートと足場が11月7日までに外され、修復を終えた外観が約2年ぶりに姿を現した。
公会堂は、1907(明治40)年の大火で焼失した町会所と商業会議所に替わる施設として計画され、1910(明治43)年に完成。総工費約5万8,000円のうち5万円を函館の豪商・相馬哲平(初代)が寄付した。完成翌年には皇太子時代の大正天皇が北海道行啓の際に宿泊所としたほか、演奏会や会議、講演会など、さまざまな形で利用されてきた。
建築から約70年を経た1980(昭和55)年には大規模な保存修理に着手し、工事が完了した1982(昭和57)年からは市民や観光客向けに建物を一般公開。明治期の隆盛を伝える洋風建築として、函館を代表する観光名所になっている。
現在の工事は、前回の保存修理から約40年の間に発生した建物の傷みやゆがみを修復し、同時に耐震補強工事を行うためのもの。2018(平成30)年11月から足場を組み始め、2019(平成31)年1月には足場をシートで覆ったため、約2年間は外観を見ることができなかった。久しぶりに姿を現した公会堂は青灰色と黄色のコントラストがくっきりと映え、通り掛かった市民や観光客を喜ばせている。
SNSでは「修復前より色が濃くなったのでは」との声も多いが、市教育委員会文化財課の担当者は「昭和55年からの修理の際に復元した、建築当初の色と同じにした。修復前はペンキが退色していたので全体的に色が薄い印象だったが、今回は全面塗り直しをしたので色が濃く感じるのでは」と説明する。
外回りの修理は完了したが、建物内部では内装工事や電気・設備関係の改修工事、展示什器の設置などの作業が年度末まで続く。一般公開の再開は来春の予定で、担当者は「大規模改修に伴って展示も一新する。リニューアルして開館した折には、新しい公会堂をぜひ見に来ていただければ」と呼び掛ける。