世界遺産登録が確実視されている「北海道・北東北の縄文遺跡群」の一つで、7月末の一般公開を予定している「史跡垣ノ島(かきのしま)遺跡」(函館市臼尻町)が7月16日、報道陣に公開された。
北海道唯一の国宝として知られる「中空土偶」を展示する市縄文文化交流センターの裏手に広がる同遺跡。紀元前7000年~紀元前1000年の約6000年にわたって定住したとされる集落跡で、定住開始期の段階から居住域と墓を分けた集落を構成していたことが分かっている。長さ190メートルにわたって「コ」の字型に土を盛り上げた国内最大級の盛り土遺構からは、土器や石器などの道具、貝や魚・動物の骨などが大量に出土しており、祭祀(さいし)や儀礼の場だったと考えられている。
この日は函館市教育委員会生涯学習部文化財課の吉田力さんが遺跡内を案内。遺跡の発掘調査を模擬体験できる「体験広場」や竪穴建物跡、盛り土遺構など、各ポイントの見どころや意義などを解説した。
このうち体験広場での発掘体験は毎日11時と14時、定員各20人で実施。同遺跡内から発掘された土器のかけらや矢じりなど本物の遺物を使い、実際の調査と同じ手順で発掘を体験する。体験後、「発掘」した遺物の種類や整理方法などについて学ぶ時間も設ける。吉田さんは「発掘体験を楽しんでもらうだけでなく、その後の学びを通して文化財の大切さを伝承していきたい」と話す。
盛り土遺構の中央にマウンド状に築かれた「丘状(きゅうじょう)遺構」では、「配石遺構や青竜刀形石器、東北地方から運ばれてきた土器など、特殊な遺物が見つかっている」と解説する吉田さん。「盛り土遺構全体が魂を送る『送り場』だと考えられているが、この場所はその中でも特別な儀礼の場だったのでは」と話した。
海を見下ろす盛り土遺構の頂上では「ここから見える海は、縄文時代から現代に至るまで、豊かな漁場としてこの地域の暮らしを支えてきた。海と山、そして川に囲まれたこの場所は食料を獲得しやすく、とても暮らしやすい環境だったことが分かる」と縄文時代に思いをはせた。オープン後は道南歴史文化振興財団のスタッフが1日3回(10時・13時・15時)、各回20人を対象に定時解説(ガイドツアー)を行う。
垣ノ島遺跡を含む「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、ユネスコの諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)によって今年5月に世界文化遺産登録の勧告が出されており、7月16日に始まった世界遺産委員会の審議を経て正式な結果が決まる。同委員会の発表によれば、縄文遺跡群の審議は7月27日18時30分~20時30分(日本時間)に行う予定。市教委は、世界遺産登録決定の翌日10時30分より祝賀セレモニーを行い、10時50分ごろから一般公開を始めるとしている。