北海道鹿部町は3月15日、タラコを熟成乾燥させた珍味「タラスミ」を町内の水産加工会社2社と共同で開発したと発表した。21日から販売する。
タラスミは、タラコを低温で熟成乾燥させ、ボラの卵で作る「からすみ」風に仕上げた新たな珍味。タラコ製造を手掛ける一印高田水産、イリエ船橋商店の2社と町が、未利用資源を活用した特産品開発を支援する農林水産省の交付金を活用し、3年がかりで商品化にこぎ着けた。大きすぎてタラコとしては規格外となる「ババコ」と呼ばれる原卵を塩漬けしてタラコにしてから調味液に漬け、1週間ほど低温で熟成乾燥させて水分を抜く。乾燥前の3分の1ほどの大きさになるため、「タラコのうまみがギュッと濃縮されている」という。
前浜で取れた新鮮なスケトウダラから取り出した原卵を使うタラコづくりが盛んな同町。複数の水産加工業者がタラコ製造を手掛けており、「甘口タラコ」発祥の地としても知られる。だが、冷凍販売が主流のため、旅行中に買うと持ち運びが難しく、常温の土産品を求める声は以前からあったという。
一印高田水産はこうした声を踏まえ、常温流通可能で、規格外品の有効活用にもなる「タラコのからすみ」作りに5年ほど前に着手。からすみの製造工程を参考に試行錯誤を重ねたが、どうしても乾燥がうまくいかず、実現を断念しかけていたという。ところが、町の新たな特産品開発の一環として国の交付金が活用できることとなり、同じく規格外品の有効活用や常温品の開発を構想していたイリエ船橋商店が開発に参加することに。それぞれ味付けや乾燥温度、乾燥させる時間などを変えながら2社で情報を交換し合い、試作を重ねて目標とする乾燥度合いと味わいを達成できたという。
味付けは2社で異なり、一印高田水産は箱館醸蔵(七飯町)の日本酒「郷宝(ごっほう)」に漬け込んだ「日本酒うま塩味」、イリエ船橋商店は道の駅しかべ間歇泉公園のオリジナル商品「根昆布だし」に漬け込んだ「根昆布だし塩味」を、それぞれ製造する。一印高田水産専務の高田未花さんは「ふわっとお酒が香る、とても良い製品ができた。漬け込むお酒を変えると味わいが変わるのも魅力的。鹿部ならではの土産の一つになれたら」と期待を込める。イリエ船橋商店社長の船橋敦子さんも「日本酒にもワインにもビールにも合う。薄くスライスして大根に挟んだり、パスタに入れたりしてもおいしい。ポケットに入るサイズでどこでもそのまま食べられるので、旅のお供にしてほしい」と話す。
価格は1本1,100円。道の駅しかべ間歇泉公園などで販売する。シエスタハコダテ(函館市本町)内シエスタハコダテ1階で21日10時~16時、両社が販売会を開く。