道南の飲食店や企業が、七飯町の酒蔵「箱館醸蔵」の製造過程で出る米ぬかや酒かすを使った商品開発を進めている。
「郷宝(ごっほう)」の銘柄で知られる箱館醸蔵は、道内でも数少ない自社精米を行う酒蔵。精米の工程で生まれる米ぬかと、酒を搾った後に残る酒かすを「商品開発に役立ててほしい」と企業向けに無料で提供している。
函館国際ホテル(函館市大手町)は、コメの中心に近い「上白ぬか」を衣に使った新メニュー「箱館醸蔵 米ぬか唐揚げ」(700円)を開発し、5月29日から「レストラン アゼリア」で提供を始めた。
北海道産若鶏のもも肉を同ホテル「秘伝のたれ」と箱館醸蔵の酒かすに一晩漬け込み、上白ぬかをまぶして揚げた、木村史能総料理長の自信作。同ホテルの広報担当者は「ジューシーでやわらかく濃厚な味わいと、パリパリ、サクサクの食感が楽しめる。『郷宝』各種も用意しているので、一緒に楽しんでほしい」とPRする。電話予約や店頭で注文すれば、テークアウトもできる。
同ホテルはこのほか、酒かすを使った杏仁(あんにん)豆腐や米ぬかを使ったパンなどの試作にも取り組んでおり、夏ごろまでにメニュー化を予定しているという。
函館海鮮居酒屋 魚まさ五稜郭総本店(函館市本町)は、酒かすを使ったスイーツ「箱館醸蔵の酒粕(かす)と函館牛乳を使った自家製カタラーナ(仮称)」の開発に取り組んでいる。酒かすを使わないカタラーナはこれまでも通常メニューとして提供していたが、「酒かすが入ることで香りが華やかになり、口に入れた瞬間に奥行きのある味わいが広がる」と社長の高野信子さん。
商品化に向けて最終的な味の調整やパッケージの製作などに取り組んでおり、夏までにメニューに加える予定。店頭販売やインターネット通販も行う。現在は正式販売前だが、希望者には試作品を1個350円で店頭販売している(数量限定)。同店ではこのほか、箱館醸蔵の酒かすを使ったギンダラの西京漬けなどを提供している。
このほか、複数の洋菓子店や食品加工業者などでも「郷宝」の酒かすや米ぬかを使った商品開発が進んでいる。