はこだて海の教室実行委員会が、函館で漁獲量が急増しているブリの新たな活用策として、加熱したブリを乾燥させた「ブリ節(ぶし)」でだしを取った「函館ブリ塩ラーメン」を完成させた。
日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として、ブリを食べる習慣がなかった函館に新たな「ブリ食文化」を定着させようとさまざまな取り組みを展開している同会。昨年、下処理したブリに衣を付けて揚げ、さまざまな味付けで食べる「函館ブリたれカツ」を考案し、今年5月には発展形として和風の「函館ブリたれカツバーガー」を開発。専用のキッチンカーで道南各地に出店し、ブリの新しい食べ方を広める活動を行ってきた。
これと並行して、「さまざまな人が商品開発に活用できる汎用性の高いブリ製品」としてブリ節の開発にも着手。うま味成分イノシン酸がカツオより多く含まれていることや、函館産ブリの「脂が少ない」という短所がブリ節作りでは長所となることが開発の決め手となった。実際の製造は北海道羅臼町の水産加工会社「のりとも朝倉商店」に依頼し、初回生産分として10キロのブリから約2.5キロのブリ節を作った。現在は追加分を製造中で、来年は生産量をさらに増やし、新メニューや新製品の開発に活用したい飲食店・食品加工業者などに提供する考え。
今回考案した「函館ブリ塩ラーメン」は、全国的にも珍しいブリ節の完成とその活用例をアピールする目的で開発。北斗市のレストラン「Pokke dish(ポッケディッシュ)」店主の齊藤亘胤(のぶつぐ)さんの協力を得て、ブリのうま味を生かしたラーメンを完成させた。
ブリのアラ、豚肉・鶏肉のひき肉、トマトのエキスで取ったスープにブリ節を加えて香りとうま味を引き立たせ、うま味調味料は使わない。塩と白たまり(白しょうゆ)で味を整え、ストレートな細麺を使う。ブリのアラでだしを取ったたれに漬け込み、皮目を焼き上げた「ブリチャーシュー」とブリ節をトッピングする。
9月17日には同店で関係者らによる試食会を開催。参加した矢田項一さんは「ブリの臭みが全くない、まろやかで角のないスープ。うま味調味料を使っていないのが信じられないほどコクがある。函館塩ラーメンとうまく融合しているので、地域に根付いていく味になってほしい」と感想を話した。開発を手掛けた齊藤さんも「函館のブリはうま味が強く、その特徴を生かしたブリ節は、保存ができて環境にも良く、だしを取るのにも総菜として食べるのにも適している。カツオやその他の魚介を使った『節』と比べても遜色なく、食べれば良さがわかる『説得力がある食材』だと思う。今後大いに注目されていくのでは」とブリ節に期待を込める。
同会事務局の國分晋吾さんも「函館の人にとって、塩ラーメンは大切で特別な存在。『塩ラーメンをブリがじゃますることなく、むしろ引き立てている』との感想をいただき、やってみて良かったと感じている。来年はブリ節を製品化し、さまざまな商品開発に活用してもらうことで、より広くブリを地域に認知させていきたい」と意気込む。
同会は、飲食店やスーパーでブリ料理を提供するキャンペーン「函館ブリフェス」を10月に開こうと計画を進めており、「函館ブリ塩ラーメン」はキャンペーン期間中に開くイベントで来場者に振る舞う予定。