好きな場所にアウトドア用の椅子を置いて座り、リラックスした時間を過ごす「チェアリング」が、函館でも静かに広がりを見せている。
チェアリングは、ライターのパリッコさんとスズキナオさんが酒の楽しみ方の一つとして2016(平成28)年に提唱したのが発祥。現在は飲酒の有無を問わず、野外に座って好きなことをしながら時を過ごす新たなレジャーとして全国に浸透しつつある。
函館では、チェアリングの愛好家3人がツイッターアカウント「函館チェアリング(@hakochair)」を1月に開設。自分たちのチェアリング風景を発信しているほか、全国各地のチェアリング風景を拡散するなどの情報発信を行っている。週末の夜にはツイッターの音声配信機能を用い、参加者それぞれが好きな場所に座って時間を共有する「オンラインチェアリング」を開くことも。
メンバーの3人は以前から湯の川の浜辺に座り、コーヒーを飲みながら波の音を聞いたり、本を読んだり、パソコンを開いたりと思い思いに楽しんでいたという。ある時テレビ番組でこれを「チェアリング」と呼ぶことを知り、「それならみんなも楽しもうよ、との気持ちでツイッターを立ち上げた」という。
「#函館チェアリング」のハッシュタグで情報発信を行ううちに徐々にフォロワーが増え、チェアリングを実践し、その風景を投稿する人も少しずつ増えてきた。運営メンバーの中村拓也さんは「波の音を聞いたり、肌に風が当たるのを感じたりしながら目を閉じてリラックスし、自然と一体化できるのがチェアリングの良さ。その楽しさを皆さんと共有できていることがうれしい」と喜ぶ。
同じくメンバーの筒井章順さんも「見慣れた場所に椅子を置いて座るだけで、見える景色も気分も変わる。見方を変えることで、日常が非日常に変わるのがチェアリングの良いところ。日本人は忙しい日々を過ごしているので、週末に椅子を出して屋外に座り、何もしない時間を作ることにとても価値があると思う」と話す。
単にチェアリングでなく「函館チェアリング」を掲げて普及活動を行うのは、「チェアリングを通して函館のさまざまな場所を発見したい、発見してほしい」との思いがあるため。「函館は海も山も、広い公園もあり、市街地のすぐそばにチェアリングにぴったりなスポットがたくさんある」と筒井さん。中村さんも「チェアリングをきっかけに少し違った視点でこの街を見るようになれば、これまで以上に函館をフルに楽しむことができるのでは」と期待を膨らませる。
コロナの状況にもよるが、参加者を募って同じ場所に集まり、それぞれチェアリングで自由に時を過ごす取り組みなども春以降に計画していく考え。筒井さんは「函館チェアリングはみんなのもの。ひとりでできる気軽なアウトドアなので、温かくなったらぜひ体験し、その様子を函館チェアリングのハッシュタグを付けて投稿してもらえたら」と呼び掛ける。