函館の漁師や農家、その他生産者などが各所に出向き、魚介類や取れたての野菜、加工品などを販売する「福マルシェ」へ、町会からの出店依頼が相次いでいる。
福マルシェは、漁師が消費者に直接魚介類を販売する活動を行う「ハコダテフィッシャーマンズ」発起人の熊木祥哲(よしのり)さんが「魚だけでなく野菜や他の食品も販売しよう」と考案した販売会。趣旨に賛同する海産物卸問屋「福田海産」(函館市宇賀浦町)が会場を提供し、2021年7月を皮切りに昨年は3回開催した。
熊木さんと同社は、これと並行して「無印良品シエスタハコダテ」(本町)で函館産のイワシやホッケを食べやすく加工した製品の販売会を継続して開いており、いずれの現場でも来場者から「うちの近くでも販売してほしい」「なかなか買いに来られないので、町会に来てほしい」と声を掛けられていたという。
町会単位での移動マルシェを以前から構想していた熊木さんは、こうした声を聞いてニーズを確信。移動マルシェに関心がありそうな町会を函館市町会連合会から紹介してもらい、第1弾として5月21日、北浜町会で初の出張版「福マルシェ」を開いた。福田海産が加工したホッケのフライやすり身のほか、市内と近郊の農家4軒の野菜、佐々木豆腐店(宝来町)の豆腐などを販売した。
「販売開始の時点で50人ほどの行列ができ、反響の大きさを感じた」と熊木さん。「町会の皆さんも、ボランティアで売り子をしてくれたり、来場者に五目ご飯を振る舞ったりと積極的に協力してくれた。参加した皆が笑顔になっている光景を見て、絶対に継続すべきことだと感じた」と話す。
現在は、北浜町会での「成功」を知った他の町会から「ぜひうちにも来てほしい」との依頼や問い合わせが相次ぐ。既に複数の町会と交渉中または交渉予定で、6月25日には大町町会での開催が決まった。販売品目は北浜町会での開催時とほぼ同じで、包括支援センターの相談会も行う。開催時間は11時~13時。
「スーパーや商店が近くにない『買い物難民』の支援と受け取られがちだが、実際には若い世代も多く来てくれている。生産者から地元の海産物や農産物を直接買いたいというニーズは大きいのでは」と熊木さん。福田海産の福田久美子社長も「ただでさえ人間関係が希薄になっている現代。コロナ禍で、人に会いたい、誰かと直接話したいという思いがより一層強くなっていると感じる。生産者が直接出向く移動マルシェは時代に合っているのでは」と期待を込める。