海産物卸問屋の福田海産(函館市宇賀浦町)が3月3日、リニューアルオープンした。店内の壁を取り払ってキッチンスペースを設け、魚さばきや水産加工品作りなどの体験ができるようにした。
同社はホテルや飲食店への卸を中心に営業してきたが、コロナ禍になってからは市内在住の漁師、熊木祥哲(よしのり)さんと手を組み、多く水揚げされるのに市場価値が低く、消費も伸びない低利用魚の加工や消費拡大などに積極的に取り組んできた。
取り組みを続ける中で、地元で捕れている魚を知らない人やさばいた経験がない人が増えていることを知り、「このままでは魚離れがますます進むと感じた」という社長の福田久美子さん。「その時に捕れた魚をさばいたり調理したりすることで、函館でどんな魚が捕れているのかを発信し、魚に親しみを持つ人を増やしたい」と思い立ち、店舗改装に至ったという。
店に入ると正面に海が見えるように見通しを良くし、店内の一角にはガスコンロやフライヤー、冷風干物乾燥機などを備えたキッチンスペースを設けた。キッチンからも店の裏手に広がる海が間近に見え、波打ち際を眺めながら魚の調理などを体験できるようにした。
「捕れたての魚を自分でさばいて干物を作り、それを自分で食べたり土産として持ち帰ったりできるようにしたい。ウニの殻を自分でむいて食べる体験も用意したい」と福田さん。得意先の宿泊施設からも体験型観光を望む声があるといい、「今後は体勢を整え、地元客向けにも観光客向けにも体験教室を開きたい」と話す。キッチンスペースを利用したい団体や個人からの問い合わせにも応じる。
バックヤードにも新たな加工機械を導入し、大量の魚の三枚おろしや皮むき作業、真空パック詰めなどに対応できるようにした。大型の機械を備える大手では対応が難しい少量の魚にも対応できるため、既に料理人などから魚の下ごしらえの依頼が複数舞い込んでいるという。福田さんは「この場所から楽しい仕事と楽しい商品がどんどん生まれていくような予感がする」と期待を込める。
営業時間は10時~17時(土曜は12時まで)。水曜・日曜・祝日定休。