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函館の中小企業と漁師が「未利用魚介プロジェクト」 常温保存できる商品に

函館の事業者と漁師が「未利用魚介プロジェクト」を始めた

函館の事業者と漁師が「未利用魚介プロジェクト」を始めた

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 函館の中小企業4社と現役の漁師が、函館近海の未利用魚をすぐに食べられる商品に加工して販売する取り組み「未利用魚介プロジェクト」を始めた。第1弾商品を6月14日から販売する。

未利用魚を使った煮魚をアピールする熊木さん

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 未利用魚とは、「型が小さい」「知名度が低い」「小骨が多くて調理が面倒」など、さまざまな理由で市場価値が低く、流通ルートにほとんど乗らない魚。函館でも近年、市場であまり人気のない魚が一度に大量に水揚げされたため、ほとんど値が付かず、漁師が市場に魚を出荷しても赤字になることが度々あったという。

 そこで、地域資源を生かした商品企画などを手がける「EGAO(エガオ)」(函館市桔梗3)プロデューサーの川崎良平さんが呼びかけ人となり、漁師の重荷になっている未利用魚を有効活用する同プロジェクトを立ち上げた。函館の漁師、熊木祥哲(よしのり)さんの定置網などにかかった未利用魚を海産物卸問屋の福田海産(宇賀浦町)が一次加工し、いかめしメーカーのヱビスパック(昭和3)が、いかめし製造のレトルト技術を応用し、煮付けか焼き魚に仕上げる。

 味付けには、EGAOが企画・販売する液体だし「極(ごく)UMAMI美人」を使い、昆布などの風味で魚の臭みを抑えつつ、「優しい味わいと減塩を目指した」という。常温で180日間保存でき、そのまま食べられる。湯せんや電子レンジで加熱してもよい。

 第1弾として、海タナゴの煮付け(参考価格450円)、ガヤ(エゾメバル)の煮付け(同410円)、サバの塩焼き(同410円)を製造した。福田海産とセブン-イレブン函館五稜郭公園前店(五稜郭町)で取り扱うほか、順次取扱店を拡大する考え。今後もさまざまな未利用魚を活用し、煮付けや焼き魚に加工して販売する取り組みを続ける。

 「突発的に大量に捕れて、その後いつ捕れなくなるか分からない未利用魚は、原料の安定供給を求める加工メーカーとの相性が悪かった」と川崎さん。そこで発想を転換し、坂口包装資材(北斗市)の協力を得て、商品ラベルを「未利用魚介プロジェクト」に統一。商品ラインアップを固定せず、どんな魚が急に大量に捕れても臨機応変に対応できるようにした。

 熊木さんも「漁師自らが6次産業化するのはとても難しい。このように地域の事業者が手を取り合い、各自の得意分野を生かして未利用魚の活用が実現できたのがうれしい」と喜ぶ。ヱビスパック営業部次長の佐藤建さんも「未利用魚をどう活用すればよいかのノウハウが蓄積でき、当社にとってもメリットがある。これまで使っていた原料が手に入らず、『何を作ればよいのか』と悩んでいるメーカーは全国でも少なくないと思うが、未利用魚に着目することで、例えば生珍味や乾燥珍味への加工など、今までなかった活用法が生まれる可能性も大いにあるのでは」と期待を寄せる。

 川崎さんは「一過性の商品ではなく、道内各地、さらには全国各地で再現できるモデルにしたい。食べて『おいしかった』と思う人が増えれば未利用魚の市場価値が上がり、普通に取引される魚になるはず。フードロス問題や漁師の廃業、後継者不足などの解決にも寄与できるのでは」と展望を描く。

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