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函館の地域団体が新たな北海道銘菓 低利用食材の脱脂粉乳とおからを有効活用

生地におからを、キャラメルヌガーに脱脂粉乳を使った「しっとり食感」の「生フロランタン」。ラベンダーの花をトッピングし、北海道銘菓らしさを演出する。

生地におからを、キャラメルヌガーに脱脂粉乳を使った「しっとり食感」の「生フロランタン」。ラベンダーの花をトッピングし、北海道銘菓らしさを演出する。

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 未利用・低利用食材を活用した地域振興などに取り組む函館の任意団体「ローカルレボリューション」が本年度、おからと脱脂粉乳を活用した新たな北海道銘菓を作るプロジェクトに取り組む。同団体が6月12日、シエスタハコダテ(函館市本町)で内容を明らかにした。

新商品として販売する生フロランタンについて解説する齊藤さん

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 これまで、低利用魚のマイワシを使った「ハコダテアンチョビ」の開発や、熟しきらなかったトマトやカボチャの活用などに取り組んできた同団体。今回は酪農分野で大きな課題になっている脱脂粉乳の過剰在庫と、食用としてはわずか1%しか活用されていないという「おから」の廃棄問題に着目し、それらを組み合わせることで新たな価値を生み出すことを目指す。

 脱脂粉乳は、生乳からバターを製造するときに必ずできる副産物。生乳の成分は脂肪分よりも脱脂粉乳など無脂乳固形分の割合が高く、たとえばバターを1トン生産すると脱脂粉乳は1.8トンできるという。団体代表の岡本啓吾さんは「脱脂粉乳は高タンパクで低糖質、カルシウムも多く含む栄養価の近い食材だが、作られる量に消費が追い付かず、乳業メーカーは常に過剰な在庫を抱えている」と説明する。

 一方、豆腐を作る時に副産物としてできるおからも、限りなく未利用に近い食材。脱脂粉乳と同じく高タンパク・低糖質で、食物繊維を豊富に含むが、水分が多くて腐りやすいため保存に向かず、わずかに食用とされるほかは、家畜の餌や農業の肥料として無償で譲渡されるか、産業廃棄物として処分される。

 函館豆腐油揚組合によれば、道南だけでも年間のおから排出量は25メートルプール1杯分に相当する約550トンに及ぶ。同組合の工藤英洋理事長は「『おからパウダーに加工すればいいのに』と言われるが、大きな設備投資が必要なうえに光熱費も高騰しており、地域の豆腐店は手を出せない。おからは栄養価が高いので、付加価値のある商品として消費されるようになれば楽しい話題になる」と話す。

 ローカルレボリューションは今回、これらの食材に新たな価値を生み出すため、新たな発想での菓子作りに挑戦。パティシエの協力を得て、脱脂粉乳とおからを主な原料にした「生フロランタン」「クッキーサンド」「Well-Bar(ウェルバー)」の3品を考案した。市内の菓子店やパン店にも協力を仰ぎ、9月から来年3月にかけて順次販売を始める。これまで日が当たらなかった副産物に花束のような価値を付けたいとの意味を込め、ブランド名は「おまめとみるくに花束を」とする。

 同団体副代表の齊藤亘胤(のぶつぐ)さんは「バターを作ると脱脂粉乳がそれ以上に作られてしまうので、脱脂粉乳の過剰在庫が減らなければ乳業メーカーはバターを量産できない。今回は、バターと生クリームを、いかに少ししか使わずおいしくできるかに挑んだが、おからのザラッとした食感を良い方向に生かし、今までにない価値を生み出せたのでは」と自信を見せる。

 「脱脂粉乳とおから、それぞれを単品で活用した商品は存在するが、その2つを組み合わせた商品はあまり例がない。SDGsを前面に押し出すよりも、おいしくて新鮮な驚きがあり、実は地域貢献にもなるというワクワクできる商品を目指した。これをきっかけに全国各地の菓子メーカーが同じような取り組みをしてくれたら、世の中全体に良い影響が波及していくと思う」とも。

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