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役目を終えたサケ科の魚を燻製に 道南の事業者と北大が共同プロジェクト

北大トラウトの製品化に取り組んだ佐々木さん

北大トラウトの製品化に取り組んだ佐々木さん

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 北海道大学七飯淡水実験所(七飯町)で研究や教育のために飼育され、役目を終えたサケ科の魚を食用として活用する「北大トラウト製品化プロジェクト」の第1弾製品「燻製(くんせい)ヤマメ」「燻製サクラマス」がこのほど完成し、7月26日、販売を始めた。

塩だけを使い、ハルニレのチップでスモークした燻製サクラマス

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 同実験所では淡水で暮らすサケ科の魚を代々飼育しており、産卵を終えた「経産魚」や研究活動で成果を出した「成果魚」など、役目を終えた魚が不定期に出るという。研究用としては役目を終えても、活用次第では「まだおいしく食べられる」ため、同実験所としても地元企業と連携した活用法を模索していたが、供給が不定期で量も少ないことから本格的な活用には至っていなかった。

 昨年、無添加の燻製作りを行う工房「Wiseman's FPL(ワイズマンズエフピーエル)」(北斗市)所長の佐々木理(おさむ)さんがこの話を知り、「水産資源の活用で持続可能なサイクルを生み出したい」と燻製としての活用を発案。魚の取り扱いについての知識や経験も必要なことから、水産加工会社「海童丸」(同)にも声をかけ、北海道大学を含む3者による共同プロジェクトとして準備を進めてきた。

 完成した「燻製ヤマメ」「燻製サクラマス」は、道南最高峰の横津岳を源とする清流で同実験所が育成した魚「北大トラウト」を塩だけで味付けし、北海道大学札幌キャンパスで剪定(せんてい)されたハルニレなどを加工したチップで燻煙した製品。ハルニレのチップは珍しいが、「シナモンのような香りがあり、それが魚に移ると甘みに変わる特性がある」という。水揚げしてすぐ海童丸の職人が一尾ずつ生け締めして放血し、徹底的に下処理することで、保存料や発色剤などを使わず、燻煙が持つ殺菌効果・防腐効果だけを生かした製品化を実現した。

 製品に用いる魚は、佐々木さんが同実験所から買い取る。「今まではほとんど流通せずお金を生み出していなかった魚だが、きちんと対価を払うことで、次に飼育する魚の餌代や設備の足しになるはず。より良い魚を育てるため少しでも役に立てたら」と佐々木さん。「一度に作れる量が少なく、商業ベースとしては成り立ちにくいが、役目を終えた魚を活用することで今後の研究や教育に生かしてもらえたら」と期待を込める。

 下処理の段階で出る内臓やアラは地元の養鶏場に譲渡し、養鶏場から出たふんは農家が肥料として使う。スライスの際に出る切れ端も地元飲食店に活用してもらい、余すことなく活用する。「小さな取り組みかもしれないが、命を無駄にせず地域で循環させるモデルができたら」と佐々木さん。今後、さらに魚種を増やして商品開発を行う計画だという。

 「燻製ヤマメ」「燻製サクラマス」は共に1パック1,300円(参考価格)。このほか、イトウのオイルコンフィ(1パック800円)も開発した。Wiseman's FPLの移動販売を中心に販売する。いずれも数量限定で、第1弾はなくなり次第終了。魚が入荷次第、今後も随時製造・販売する。

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