食べる 買う

真イワシを新たな資源に「ハコダテアンチョビ」本格始動 10月から一般販売

ハコダテアンチョビの今後の展開を話し合うプロジェクトメンバー

ハコダテアンチョビの今後の展開を話し合うプロジェクトメンバー

  • 131

  •  

 函館産の真イワシでアンチョビを作る市民有志が8月15日、「ハコダテアンチョビ」のブランディングを行う任意団体「Local Revolution(ローカルレボリューション)」の旗揚げを発表した。春以降に仕込んだアンチョビを9月11日から先行販売し、10月から一般販売を始める。

4月に限定販売された「ハコダテアンチョビ」試作品

[広告]

 若手漁師や海産物卸問屋と協力しながら、独自に真イワシの消費拡大に取り組んできた複合施設「シエスタハコダテ」(函館市本町)統括責任者の岡本啓吾さんが代表を務める同団体。アンチョビ作りの製法研究に熱心に取り組む北斗市のレストラン「Pokke dish(ポッケディッシュ)」オーナーシェフの齊藤亘胤(のぶつぐ)さんが副代表を務める。

 同団体はこれまで、海産物卸問屋「福田海産」(宇賀浦町)や老舗塩辛店「小田島水産食品」(弁天町)、対面販売による魚の消費拡大に取り組んできた函館の漁師、熊木祥哲(よしのり)さんらと手を携え、漁師からも市場からも厄介者扱いされている真イワシを新たな地域資源にするため、アンチョビに加工して販売する仕組みづくりに取り組んできた。

 真イワシは近年急激に函館近海での水揚げが増えており、「ヤリイカを狙ったのに、網を揚げようとしたら真イワシばかりのこともしばしば」と熊木さん。「市場に出してもほとんど値段が付かないので漁師も困っており、網を揚げずにそのままリリースしてしまう漁師も少なくない」という。

 同団体はこうした状況を踏まえ、水産加工業者らが漁師から適正価格で真イワシを買い取ってアンチョビに加工し、一般消費者や料理人に向けて付加価値を付けて販売することで、関係する全ての人が利益を得られる持続可能なサイクルを目指す考え。

 その一環として、4月に実施したハコダテアンチョビ試作品の限定販売に続き、9月11日には函館産真イワシを使って5月から順次仕込んだハコダテアンチョビの瓶詰め(100グラム入り=1,000円)の先行販売を「無印良品シエスタハコダテ」(本町)で行う。ネットでの先行販売も同日に始める。店頭、ネット販売ともに200本限定。

 齊藤さんは「一般的なアンチョビはカタクチイワシを原料にしており、真イワシを使ったアンチョビの商品化は世界初かも。北海道立工業技術センターや北海道大学水産学部などの協力を得て、安全面に十分配慮しながら商品化を進めてきた。気温の高い夏は発酵が進みやすいため、味もとても良い感じに仕上がっている」と自信を見せる。

 アンチョビの作り方に関する体系化された文献資料は国内外にほとんどなく、同団体は今後も真イワシを使ったハコダテアンチョビの製法確立に向けて研究を重ねる。数値化・明文化したレシピを確立し、販路に一定の道筋を付け、ハコダテアンチョビのブランド価値を高めてから、関心を持つ水産加工業者に呼びかけて「ハコダテアンチョビプロジェクト」の輪を徐々に広げたい考え。

 齊藤さんは「真イワシがこの先何十年も取れ続けるのかは解明されていないが、漁師や水産加工業者が今困っている状況を何とかするための取り組み。イワシを塩漬けするだけなので初期投資も少なく、やろうと思えばすぐにできる上に、もし来年イワシが取れなくても誰も損をしない」とアンチョビ作りのメリットを説明する。岡本さんも「新たな商品をゼロから売り込むのは難しいが、アンチョビは世界中のシェフが使っている食材。食味の良い真イワシを新鮮なうちに漬け込むハコダテアンチョビは、世界に向けて売り込んでいける可能性が大いにある」と夢を描く。

 10月以降の一般販売価格は、瓶詰め1本(80グラム)=1,000円。

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース